去年できるようになったことは、カレンダーを毎月めくることです。
正確には、一月一枚印刷されているポストカードサイズのカレンダーを毎月貼り替えられるようになった。
以前も卓上カレンダーを買ってデスクの上に置いてはいた。けれども夏には、紙束や本や文房具やゴミに押しやられて、デスクの隅で倒れたり傾いたりしている。
そして毎年その頃には、私は季節が進んでいく事実を直視できなくなっていて、ちらちらと視界に入る7月のカレンダーを無視しながら冬を迎えることになるのである。
かわいい絵柄のカレンダーを選ぶのは楽しい。というか、好きな絵やデザインのかわいい紙雑貨を罪悪感なく購入できる機会なんてそんなにない。けれども自分には活用できないし邪魔になる(捨てるときの分別もめんどくさい)のが十分わかったので、ここ数年はカレンダーを買うことをやめていた。
日付自体はスマホやPCのアプリを見れば確認できるし、予定は一応スケジュール帳に書き込んでいるので、紙のカレンダーがなくても問題なく生活できる。
ちなみに私は実家暮らしだ。子どもの頃から使っている自室と、作業部屋として占拠している亡父の書斎以外の部屋は、母親がきちんと管理している。人目につく場所には紙のカレンダーがかかっていて、もちろん毎月1日に一枚めくられている。
しかし、2023年3月、私は満を持してカレンダーを購入した。
きっかけは大学院の満期退学を前提に就活することに決めたことだ。
非常勤講師等の仕事をしながら求人を探し、期日までに書類を作成するという複雑な作業を遂行するために、日付を正確に把握しなければなるまい。
(本来は研究活動だってそれが必要になるはずということはわかっている)
それに目で一回見ただけでは情報を飲み込めない私には、何度指でなぞってもタップした判定にならない紙のカレンダーが向いている。
視線をちょっと動かした位置に紙のカレンダーがあれば、スマホのロックを解除するなり手癖でTwitterを開いて複数のアカウントのTLを巡回し、本来の目的を思い出してカレンダーアプリを開くという手間が省けるだろうし。
絵柄はもちろん形態が重要だ。
卓上に置くとすぐに行方知れずになってしまうので、壁に貼るタイプがいい。デスク上の棚に貼れる小さいものがベストだろう。予定の書き込みは手帳にするので、日付の余白はいらない。
人や動物が描かれているものは気分じゃない、目に入っても気が散らないように、シンプルでかわいらしすぎないものがいい…。
minneで条件に合いそうなものを検索して、ポストカードサイズで一枚ずつ貼り出すタイプのカレンダーを購入した。くすんだ温かい色味の背景に、やわらかいタッチのパンのイラストが描かれているデザインだ。
木製の棚にマスキングテープで留めると、なんだかきちんとした人に近づいたみたいだ。
隣に飾っている『ゴールデンカムイ』の白石由竹の缶バッジとデスクの混沌はいったん見ないことにする。
おかげさまで、12月まで1枚ずつカレンダーを貼り替え、毎月違うパンのイラストを楽しむことができました。
同時に、世の中の時間の進みをぼんやりとしか認識したくない状態を脱していた。
仕事と就活のスケジュールはすでに決まっているので、それに従って手と頭を動かせば、「日付が進むのに自分だけが取り残される」ということもあまりない。
幸い10月に常勤の仕事(教職ではない)が決まったので、時の流れに対する自分の停滞に大きくさいなまれることもなかった。
あと講義中の教卓に置くために入手した小さな時計も、デスクの上を「仕事をする人の机」らしくしてくれた。
卵が先か鶏が先か、という話になるけど、自分の停滞した状況を変化させようとしたことと、時間の進行を目で見て把握しても大丈夫になったことが、2023年の成果の一つです。